短編 『アホ隊長の日常』
ジリリリリリ――――
時を刻む機械が持っている鐘を連打する。
「っるせぇ――――」
枕に、うつむけに沈みながら手だけを持ち上げ、振り下ろす。
ガィンッ―――――
機械はぺしゃんこにつぶれて、鳴るのを止めた。
「―――――よし」
「よし、じゃありません」
近くで、女の声がした。
「――――げ」
「何度時計をつぶしたら気が済むんですか!?さっさと起きてください!さっさとぉぉ!」
「す、すんませーん」
ジャァァァ――――
シャカシャカ――――
水の流れる音と、歯磨きの音があわさる。
「もう、また買わないといけないじゃないですか」
テアが時計を見ながら、非難の声をあわせる。
「いらねぇだろ。お前が起こしに来るんだし」
「私は見張ってるだけです。自分で起きられるようになってください。子供じゃないんですよ?もういくつになるんですか?」
「――――覚えてねぇ」
「あ〜、どうしてこんな人が、第一部隊の隊長なんでしょうね」
歯磨きをしていた男、ヴィ・ガーディアンは、歯ブラシを置き、
「それは―――」
テアの方を振り向く
「このルックスと、強さのおかげさ」
にぃと笑う
「―――――旦那様」
「ん?なんだいテア?」
テアは、はぁとため息をつき
「口に歯磨き粉ついてますよ――――」
「そういえば、あいつは?」
服を着替え、朝食を取っている。
「あいつ?アリシアお嬢様ですか?」
「そう、我が姫君」
「――――もう学校へ行かれましたよ」
「はぁ?嘘だろ?まだ八時だぜ?」
近くの時計を見ながら言う。
「今日は、委員会らしいですよ」
「はぁ、学校って大変なんだな」
感慨深げに言う。
「あなたも、仕事して下さい」
「へい」
「おはようございます。隊長」
「あ〜、おはよう」
建物の中に入ると、ショートカットの娘が駆け寄ってきて、挨拶をする。
「あれ?そういえば今日は会議じゃないんですか?」
「ん?んなわけねぇだろ」
「でも、他の隊長さんは――――」
「あいつらに会議があっても、俺に会議があるなんて決まってねぇ、だろ」
「そうなんですか?」
「そんなもんだろ――――」
ペシッ
頭を、何か硬い物ではたかれた。
「そんなもんだろ――じゃありません。貴方にもちゃんと会議はあるんです。さっ、早く来てください」
そこにいたのは、彼の秘書、ゼルであった。ヴィの頭の上には硬いファイルがのっかっている。
「早く!」
「そんなにひっぱんなよ。なぁゼルちゃん」
「ちゃん付けはやめてください」
ぐいぐい引っ張っていく
「で、ありますから今回の盗賊団出現事件についてのですね―――」
くわぁぁ――――
しゃべっている男の前の男から大あくびの音が響く
「ええ、資料が出ましたのでお渡ししま―――す」
前の男が、片手で鼻をほじっている。
「こ、これです」
全員に資料がまわった。
「総員74人、たいした数です」
前の男が、その紙を縦に折りだしている。
「ええ、首謀者は――――」
その紙を一度開き上の両端を折った線にあわせるように折る。
「マイク・オニオン、この大柄というかでぶ男」
前の男がくくくと笑う、既に紙は飛行機と化している。
「あとは幹部が三人、刀使いに銃使い、あとはナイフ使いだ。マイクを囲むようにしているので分かると思います」
前の男は紙飛行機を色々な角度から眺めている。
「あ、あの」
しゃべっている男が前の男に語りかけた。
「ん?なんだ?」
「ガーディアン隊長?聞いてますか?」
「ああ、ちゃんと聞いてるよ」
「そ、そうですか」
「では――――この一団は剣士協会のまわりの小さな街・村を狙って行動しています。というわけで、部隊単位で巡回をしてもらおうと思います。ええ、割り当てですが、第一部隊は東側を、第二、第三部隊は北側――――」
――――ZZZ
前の男がいびきをかいて寝ていた。
「うえ〜、なんで一日中村々をまわらにゃならねぇんだよ」
十数人の団体の先頭をヴィが行く、他の者と違い防具を着けず武器は背中にくくりつけた柄の長い大剣のみである。愛用の黒いエアライダーにまたがっている。
「しょうがないじゃないですか。盗賊団に文句言ってくださいよ」
「ん〜何人だっけ?」
「74人です」
「多いな、めんどくせぇ」
街・村を回るうちに夜がふけてきた。
「よ〜し、今日はこの街に泊まっぞ。もしかすると襲撃があるかも知れないから、よ〜く見張っとけ」
ガンガンガン―――
「るせぇ――――」
「たいちょぉぉぉ!!起きてくださぁぁぁい!」
「ぐおっ、へブ」
――――ゴッ
何かが額に激突した。ベッドのどこかにでも当たったのだろう。
「はう!」
電気がつく、ショートカットの少女が頭を押さえて床に転がっていた。
「どうしたケイ!?何があった!?」
「た、隊長―――」
少女、ケイが涙目で何かを訴えようとする。
「敵襲!盗賊団襲撃!!」
宿屋に大声が響く。街の外側のあたりが赤い。燃えているのだろうか。
「くそぉ!まさかあいつらがケイを!!ゆるさねぇ!必ず仇は取ってやる!」
ちかくにかけてあった相棒を手にもち外へ走り出ていった。
「―――ち、ちが―――う」
外には、数名の仲間が大勢の盗賊たちと交戦していた。一人の仲間につめより
「敵はどこから来た!?」
「は、この道をまっすぐいった入り口からです!」
「大将は一番奥か――――」
「し、しかし敵が多すぎます!ここを防ぐのがやっとです」
「俺が道を開く!続いて、被害を押さえろ!それと、ケイが負傷した手当てしてやれ!」
「は、はい!」
愛剣を構え、敵の波に走り出す。
「どけぇ!」
数人の盗賊が、道を防いだ。
ゴウ―――――
ヴィが間合いの手前で大剣を振る。立ちはだかった盗賊は、なすすべなく吹っ飛んだ。そのまま、地面に落ち気絶する。剣圧のみで数人を吹き飛ばしたのだ。
「うおりゃぁぁ―――――!!」
立ちはだかる者全てをなぎ払い、前進していく、数十度目を振り終わったとき道が開けた。
「お前ら!そいつらまとめとけ!」
そのまま剣を担いで入り口へと走り去る。
「大将!ほとんどの同士がやられました!」
「んだとぉ!」
大柄な男が通信係の男に詰め寄る。
「残った者の報告によると、ヴィ・ガーディアンがこちらへ向かっているとのこと」
「ひ、ひぇ〜」
「こら!お前ら、逃げんな!」
その言葉を聞いて、何人かの盗賊が逃げ出す。
「私達三人と大将が相手ならば、負けることは無いでしょう」
口元に分厚いスカーフを巻いた男が言った。
「いくら最強の英雄でも、元A級ハンターの俺達にはかなわねぇって、大将!」
黒いテンガロンハットをかぶった男が大柄な男をなぐさめる。
「へへへへへ、あいつを倒せば。オレたち有名」
怪しい目つきの男が言う。
「そうか、そうだな。あいつを倒すぜ。野郎ども!」
「おお!」
男達のかけ声が轟く中、何かが駆けてくる音が聞こえる。
「来たようですね」
「そのようだな」
「へへへへへ、八つ裂き、八つ裂き」
「ぐふふふふ」
ズサァァァァ――――――
砂埃が舞い上がり、中に一つの影が浮かび上がる。
「お前らが、盗賊の親玉か?」
影が言葉を放つ。
「だったら、どうします」
カチャ――――
砂煙の中から、大きな剣先が突き出る。
「殺しゃしねぇよ、オレは人殺しは――――」
ドゥン――――
砂煙の一部に小穴が穿たれた。煙に突き立った剣が大きな音を立てて落ちた。テンガロンハットの男が、銃を前に突き出しながら言う。
「へ、へへへへ。最強の男も、銃にはかなわねぇか」
「そいつはどうかな」
「――――!」
ドゴォ――――
「ゴフォ――――!」
帽子の男が、断末魔を残して吹き飛び、硬い石壁を男の形にくり貫いた。
「な――――!」
帽子の男が立っていた場所には、背の高い剣士協会の上官の制服を着た男が立っていた。
「無粋だねぇ、人の話は最後まで聞くもんだぜ」
自分のことはさておいて、ヴィが言った。
「くそぉ―――!」
ブン―――
「よっと」
スカーフ男の一閃を、軽く跳躍してかわす、そして空中で身体をひねり、地面に寝そべっていた自らの愛剣を片手で掴んで立ち上がる。
「第二ラウンド開始、だな」
ヴィがスカーフ男と向かい合う。他の者も構えるが、全く気にしていない。
「うおおおぉぉ!」
「へへへへへ!」
スカーフ男が走り出す。同時にナイフ男がナイフを投げた。
キン―――
ヴィがそのナイフを、剣で軽く弾く。そのまま、守りの形に入った。
ギィィィィン―――
剣と剣のぶつかり合う音がこだました。しかし、
「な―――!」
ドォォォォン―――
スカーフ男が空高く吹っ飛んだ。数秒後、男は背中から落ち地面にめり込みながら悶絶した。
「オレ式攻防一体の型、決まったぜ」
「ひ、ひぃぃ!くらえ!くらえぇ!!」
ヒュッ―――ヒュッ―――
数本の銀線が飛来する。
フッとヴィが消えた。
「―――ガ!」
いきなり、ナイフ男の顔を何者かが鷲づかみにした。そのまま地面に押し付けられる。
後頭部が地面に突き刺さり、男は動かなくなった。
「あとは、あんただけだぜ。でぶちん」
「くっ―――くそぉ!」
大男が、持っている金棒を振り回す。
「うおぉぉぉぉ――――!」
渾身の一撃がヴィ向けて振り下ろされる。地面に激突した金棒は、地を揺るがした。ヴィは軽く避けている。
「――――それで終りか?」
「――――ぐぉぉぉ!」
「たく、うるせぇ」
今度は水平に振る。
ガァン――――
両手でフルスイングされた金棒は、ヴィの右手に持たれた大剣に受け止められた。
「――――!」
「鉄ごときが―――俺のスタンドライバーを折れるとでも思ったか」
ピシッ――――
金棒に亀裂が走る。
「じゃぁな―――もう、終りにするぜ!」
ズサァ―――
ヴィが大男をすり抜けた。立ち上がり、巨大な剣を一振りする。
「オレ式―――神速疾風。決まったぜ」
ドサッ―――
大男が倒れる。
「ケイ―――仇は、取った」
「ぬぁぁぁぁにぃぃ!」
「だから、隊長のせいで頭にこぶできちゃったんですよぉ」
「じゃぁ―――昨日の俺の頑張りは――――」
「いや、あれはあれで良かったんですけど」
「―――はぁ」
すっかり気が抜けた顔になってしまっているヴィ
「とにかく!こぶのお返しはしてもらいますからね!」
「うぁい。で、何すれば?」
「う〜ん、おいしいご飯!おごってください!」
その言葉を聞いて、何故か急に元気になった
「そうか!それはオレにデートのお誘いをしているんだな!いいぞ、それなら!」
それに、ケイは顔を真っ赤にして反論する。
「ち、違いますよぅ!」
「ほ〜ら赤くなった」
「だ、だから!」
こんな日常である。