第三章 『閉ざされた街の危機』

 

「はい、何にも異常なし!」

「いてぇ!」

 白衣の女性に背中をひっぱたかれてグリードは前へとのけぞった。突然だったので油断していた。

「どこが痛いのよぉ?」

「・・・・・・背中」

「うそつけぇ!」

「叩くなぁ!」

「ああ、も〜うるさい」

「おまえなぁ・・・・・・」

 ここは、ギルドにある医療局、怪我の治療から病気の治療、更には精神、美容、もうなんでもかんでも詰め込んだ場所である。特に怪我などは、最新のナノマシン治療により傷跡も残らないという。噂では蘇生もしているらしい。

「まぁいいや、で、アセは?」

 アセンブラは眠っていたので、グリードは特に問題はないと言ったのだが、ジュンの「あんたは信じられない」との意見にラスナが「同感だな、貴様なら死にかけでも、大丈夫といいかねん」ということで連れてくることになった。すると、即入院、絶対安静ということになった。

「大丈夫、呼吸も安定してるし。一日寝れば元気になるわよ、でももうちょっと様子見るから」

「そんな、大袈裟な・・・・・・」

 グリードが、そういうと

「なぁにをいってんのよ!大体ね、あんなにいっぺんに法力出したら、もしかしたら死んじゃったかも知んないのよ!」

「でも、そのあとまだ戦ってたぞ」

「え!?」

 時間が止まる。口を開いたのは女医の方

「ウソよ。だってあれだけ放出したら動くのはおろか立つことだって出来ないのよ」

「・・・そう、なのか?」

「そうなの!だから、絶対安静!もし入ったら・・・・・・そこ!!」

 ヒュッ―――――

「ひっ!」

 忍び足で外へと出て行こうとしていたジュンの横っ面を、高速の銀線がかすめ、白壁に突き刺さった。それは、よく研がれたメスであった。おそろしくとがっている。

「よく聞いておきなさい、貴女は特に」

「は、はい」

 ジュンがヘナヘナとくずおれる。

 白衣を着ている女性は、マルナ・リーベンス、ここ医療局の医者の一人だ。

「いい、もし入ったら串刺しにするわよ。わかった?」

「・・・はい」

 ジュンが渋々答える。

「返事が小さい!」

「はい!」

「よし」

 マルナは満足げな顔をして、微笑み。

「じゃぁ、ジャマだからもう出ていって」

 理不尽な扱いにグリードが口を開く

「あのなぁ・・・」

 マルナはメスを数本取り出し、微笑みつつ言った

「何か?」

「・・・いえ、帰ります」

 

「なぁ、知ってるか?」

「え〜?なにがですかぁ?」

 男の声に、後ろを向いて作業をしていた少女が答える。

「ん、特A級ハンターの一人が入院したってやつ」

 隔離都市―ハンターズ―のハンターは、5段階のランク分けがされている。DからA、そして特Aとなっている。D級ハンターは研修期間、基本的な戦闘の訓練などを行う。C級ハンターは試験期間、対クリーチャー戦を想定した実戦訓練が行われる。実際に仕事ができるのはB級ハンターからである。そこからは実力がものを言う。特A級ハンターには、専用の個室―というより家である―が与えられ、特別な仕事が与えられる場合もある。ただ、それ以外は他とあまり変わらないという実情があるが。

 少女は少しうれしそうに

「知ってますぅ、あたし明日お見舞いに行こうと思ってるんですよ〜」

「・・・なんでだ?」

 少女は少し照れたようにして、言った。

「えへへへ、ファンなんですぅ」

「・・・・・そうか、俺もいくのだが。一緒にいくか?」

 少女は、急に顔を紅くして

「もしかして・・・・・・」

「なんだ?」

 男が聞く。

「リーダーもあの人のファンなんですかっ!?」

沈黙

「・・・」

「・・・・・・」

 なんでそうなるという顔をしている男、何故か一生懸命な顔をしている少女。沈黙を破ったのは少女であった。

「・・・・・違うんですか」

「・・・当たり前だ」

 男は一度そこで言葉を切り、

「で、一緒に行くのか行かんのか?」

 少女は、はっとして

「い、行きますぅ!」

 

「・・・あなたから連絡が来るなんて、初めてじゃないかしら?」

 端末の画面に映る女性は、少し意外そうな顔をしている。

「・・・そうかもな」

 女性は、ふふ、と笑い。

「相変わらず、無口なのね」

「・・・よく言われる」

「・・・・・・まぁ、いいわ。で、今日は何の用?」

「君から連絡を頂いた、例のクリーチャーのことだが・・・」

「ええ、それが?」

「それと思しき個体を発見、処理した。その表皮の一部を送る。調べて欲しい」

 女性は少々驚き、無表情の青年に問い返す。

「あなたが・・・倒したの」

「そうだ」

「全部?」

 表情の無い青年は、首を横に振り

「違う、一体のみだ。最低でもあと四体はいる」

「そう・・・・・・」

 女は、少しがっかりしたようなそんな顔をしていた。

 男は、口を開いて何か言いかけたが、やめてそれをごまかすように首を振る。

 女はそれに気付いたのか

「どうしたの?」

「・・・いや・・・・・・なんでもない」

「・・・何か隠してない?」

「・・・・・・切るぞ」

 青年は構わず、回線を切ろうとする。女は慌てて

「待ちなさい!ラスナ!ラスナ・フィル・グランツ!」

「・・・・・・!」

 突然の女の剣幕に、ラスナは驚いたのか少しだけ目を大きくした。

「あなたは、嘘が下手ね。何か隠しているんでしょ?」

 その眼差しは画面越しにでも真剣さをにじませていた。

「・・・・・・すまない、テア・・・君には余計な心配をさせたくない」

「・・・」

 テアはゆっくりとうなずき。

「分かりました。そこまで言うのなら、聞かないでおくわ。またね」

「ああ・・・」

 通信が途切れる。テアは一つため息をつき、

「そんな言い方したら、余計心配よ・・・あら?」

 ―――ガチャ

 ノブが回る音に後ろを振り向くと、ドアからに13、14くらいの少女が目をこすりながら顔を出した。母親譲りの茶色い髪を肩の辺りで揃えて、父親譲りの深い青色の眼でこちらを見ている。さっき叫んだのが聞こえたのかと、内心慌てながらもいつもの表情で少女に尋ねる。

「ごめん、起こしちゃった?」

 少女は、ん〜ん、と首を振った。どうやら聞こえていなかったらしい。心の中で胸をなでおろしていると、少女が言った。

「喉が渇いたの」

「じゃぁ、お水を汲んで来てあげる」

 少女はにこりと微笑み

「ありがとう、テア」

 テアも微笑み返す。

「いえいえ、これが仕事ですから。お嬢様」

 テアは、水を汲みに少女の側を横切り、出て行こうとする。

 すると、スカートのすそを掴まれた。

「ん・・・?」

 見ると、少女―アリシア―がすそを掴みながら、こちらを見つめている。

「どうしたの?」

 テアが問う。

「誰?」

「え?・・・」

「誰と話してたの?」

 どうやら話をしていたのは知っているらしい。

 テアはそこで気付く。この少女には、少女の父親が最近帰ってきていない理由をまだ話していなかった。

 だから、心配しているのであろう。

「私の友達・・・そう、友達よ」

「そうなの・・・あ・・・ごめんなさい」

「いえ、いいの。じゃぁ、水汲んできますね」

「お願いします」

 

「あれ?・・・グリード(あのバカ)は?」

 ジュンが周囲を見渡す。手には花束を持っている。

「・・・知らん、家にもいなかった」

 答えるのはラスナ。どうやらグリードの家に行ってきたらしい。手には果物の詰め合わせ。

「まぁ、いいか・・・・・・ああ!?」

 ジュンが突然、素っ頓狂な声をあげる。

「・・・どうかしたか?」

「まさか、あのバカ。抜け駆けして先に行っちゃったのかも!」

「・・・・・・だったら殺すな」

 二人は、見つめあい、ほぼ同時にうなずいてから歩き出した。

 

「見たことが無いクリーチャーだ・・・変異種かな、でもこんなに変わるだろうか」

 つぶやきながら、眼鏡の青年―シュー―が、紫の物体をまじまじと見つめる。

 ラスナが持ってきたクリーチャーの死体、それを見て、彼は久しぶりの高揚感に襲われた。武器の開発をする時のそれとは違う、また別のそれは、彼を徹夜へと誘った。

 いまだに死体にくっついている角を見る。

「ラスナさんが言うには、咆哮で仲間を呼んだということですが、まさか召喚術を・・・?」

 シューはその黒く鋭い角にそっと触れようとする。

「・・・・・・!」

 突然、その角が淡い光を放ち始める。それは、とても綺麗で、彼は吸い込まれるようにそれに見入った。しかし、はっと気がつく。何故この角は光っているのだろう。こいつはとっくに―――

「まさか・・・!?そんな!とっくにこいつは死んでるのに!!」

 そして、なんとかその角を死体から外そうとする。法術は、法珠を体に密着させないと発動することが出来ない。強力な法力を持つ者以外は。

だが、それはピクリとも動かない。

思いきり力を入れたせいか、これから起こりうる事態をあんじてか。額に浮かんだ汗を拭い。そのうちにもだんだんと光は強まる。

「・・・大変だ・・・・・・このままだと」

 

 ドアが開くと共に、元気な挨拶が白い病室をこだまする。

「おっはよ〜〜〜!」

 アセンブラはベッドから上半身だけ出している。パジャマは薄い緑で、ウサギが描かれている。医療局の物らしい。

「あらぁ、すっかり元気ねぇ」

 ジュンは言いながら花を生ける。

「あれだけ寝ればな」

 ラスナは持ってきた果物の籠を、アセンブラの近くの棚に置く。

「ありがと〜・・・あれ?」

 アセンブラがキョロキョロと首を振る。

 ジュンは、不思議な顔をする。

「どうしたの?」

「グリードは?」

 不思議そうな目で、二人を見る。

「いや、それがな、家にいなかった」

「そうなの。で、ここに来てると、思ったんだけど・・・」

「ほぇ」

 アセンブラはきょとんとしている。

 ジュンは、ふと気付いたように

「それより、いつ退院できるの?」

「・・・う〜む。まだ力が入らんのだ」

 アセンブラは、頭をかく。

「それってまだ治ってないってこと?」

「大丈夫、ちょっとした後遺症よ。あと6時間くらいしたら治るわよ。そしたら退院ね」

 ドアから入ってきたのは、白衣を着たマルナであった。

「お見舞いご苦労様。」

「おはよ〜マルナ〜」

「おはよ、アセちゃん」

 マルナが白衣のポケットからケースを取り出す。

「これ、おくすりね」

 

「あ、ああ・・・」

 突然の衝撃にシューは研究局の壁に叩きつけられた。思い切り背中を打って息が詰まった。

 フシュウゥゥゥゥ―――

 かすむ眼で、前を見つめる。煙が立ち昇っていた。彼は意識が遠のく中で、服のポケットに手を入れる。そして、警報装置を取り出した。

 ―――声が、聞こえた。

「ここが、そうなのか・・・クククク、やっと入ることが出来たぞ。ここにアレが・・・」

 構わず、誤作動防止用のふたを親指で開き、思い切り押し込んだ――――

 

「今日がいい天気でよかったですぅ」

「そうだな・・・」

 うれしそうな少女と、それについて歩く青年。少女は花束を抱えている。

「でも、どうしてリーダーもお見舞いに行くんですかぁ?」

「・・・」

 青年が立ち止まって辺りを見回している。

「どうしたんですかぁ・・・?」

「何か、感じないか?」

「え・・・?あ・・・」

 青年がフッと笑い

「どうやら、見舞いは後になりそうだ」

 そして――――

                    

(畜生っ!)

 グリードは、自分の手を睨みつけた。

(俺のせいで、アセを危険な目に・・・)

 その拳を思い切り握り締める。

 そして、思い切り自分の額を殴りつけた。

 ガン――――

 痛くない、今の力なら石でも砕けるのに―――

 ふがいない自分はいやだった。一対一ならば負けない。そういう自負はある。しかし、複数体との戦いとなると、どうしても自分の腕の届く範囲までしか、攻撃が出来ないのだ。一人ならば、何の問題もない。自らの能力で、少々の攻撃ならば無傷でいられる。問題は、仲間がいる場合だ。心強い仲間だから、初めから考えていなかった。まさか、あんなに無茶するなんて、正直平静を装ってはいたが、自分があの場で一番、自分を殺したがっていた。

(思い出せ・・・俺は自分だけを護る存在だったか?)

 思いつつ、辺りを見渡す。

 暗い部屋。そこにあるのは人一人がゆったりと入る事ができるような筒。昔の事を思い出せる設備の前で、昔の記憶がよぎった。俺が法力を持たない理由、法力無しで動くための別な器官。それの応用方法。

 応用方法――――

 思い出した。そしてつぶやく

「・・・気」

 その時―――

 

ウゥゥゥゥゥゥン―――――

突然、鳴り響いたサイレンは滅多に聞かない。クリーチャー侵入の知らせであった。

「・・・・・・!」

『クリーチャー侵入。ハンターは、直ちに駆除を行ってください。一般市民は、避難してください』

 機械の感情のない声が告げる。今ごろは街じゅうの警報が鳴り響いているだろう。

 ラスナとジュンが顔を見合わせ、一気に病室の扉から走り出る。ジュンが、小型の端末を取り出しクリーチャーの位置を確認する。ギルドの一角に赤い点が一つ。そして市街地に赤い点がどんどん広がっている。

「研究局?」

 ラスナがつぶやく、いつも背中に背負っている剣は、既に右手に収まっている。

「・・・シュー!」

 ジュンが弟の名を叫びつつ、駆け出す。ラスナもそれに続く。

 

「ち、イブ!お前は一般市民の避難を手伝え!俺は警報の発信元を探る!!」

 青年が両腰につるした剣を引き抜き、左を体の前、右を体の後ろに来るように構える。イブと呼ばれた少女も抱えていた花束をとりあえず道の端において左腰に取り付けた20cmほどの筒を取り出し展開する。それは一気に150cmほどに伸びさらに刀身が30cmほど突き出して、長刀の姿へと変わった。

「わ、分かりましたリーダー!」

 街じゅうに轟いた警報と共に、突然地面から人形のようなクリーチャーが沸くように現れはじめ、街を埋め尽くしていく。

「行くぞ!」

「はいぃ!」

 青年は真っ直ぐタワーへ向かって、少女は街中へと駆け出していった。

 人形達が彼の前に立ちはだかる。妨害のつもりだろうが、彼は構わず二つの剣を斜めに交差させながら突っ込む。

雑魚ども(貴様ら)に見舞う剣など無い!駆けろ大地!」

 彼の右手の指にしてある。4つのうちの黄色い指輪が光る。彼はそれを人形の壁の前で振り上げた。

 ドドドドドォ――――

 彼の手前の地面から隆起した岩が出現し、そこにいた人形を消滅させる。そして、岩が引っ込みさっき隆起した更に手前へと、まるでそうやって走るかのように岩が出現する。そこに出来た道を青年が駆け抜けていく。

「しかし、こいつら・・・どうやって入った・・・?」

 タワーが見えた。この距離なら―――

「風よ!唸れ!!」

 緑色の指輪が光った。右足を踏ん張って、走る勢いを殺さずに跳躍する。

 おそろしい距離を跳躍して、狙った通り研究局の窓ガラスを蹴り破りながら、着地する。

 立ち上がって、目の前を見る。

 そこにいたのは、長身の男だった。白い服を着ているので、研究局の人間だろうか。驚いたようにこちらに顔を向けている。白く長い髪のせいで鼻から上が良く見えない。

「あんたが、警報を鳴らしたのかい?」

 男に近づいた。白い服を着た男は口元に笑みを浮かべ、こちらに向き直る。

(嫌な笑い方だな・・・)

「クククク、そうなるかも知れんね」

 ちらりと顔が、見えた。紅い眼をしていたように見えた。

「おい、大丈夫かよ・・・眼充血してるぜ」

 ―――スッ

 白い服の男が揺らめいたように見えた。

「・・・あ・・・・・・」

 ―――――ドッ

 

ガン!

 研究局のドアを蹴破ると、丁度C・Gと思われる男が、腹を押さえて倒れる所だった。そしてその男の近くに薄ら笑いを浮かべながら彼を見下ろしている長身の男。その男は白かった。頭の天辺から足の先まで、真っ白な長衣が纏い、髪と顔はそれよりも白く見えた。倒れた男は、どうやらそいつにやられたのだろう。

 ラスナとジュンは、状況が把握できずに唖然とした。白い男が、こちらを向いた。

「・・・また現れたか、人間どもめ」

 白い男は、嘲笑をまじえながら言う。

「誰よ・・・・・・あんた・・・?」

 ジュンは、その言葉に不信な顔をして問い返す。

「私か・・・?私は・・・」

 男は、思い出すように言った。

「クリーチャーだ」

「え・・・?」

 白い男は、クククと笑い。

「そう、私はクリーチャーだ。貴様ら人間どもとは違う」

「・・・そうか。クリーチャーなのだな」

 ラスナが確認するように問い返す。

「ああ。その通りだ」

「なら・・・・・・」

 ラスナが、大刀を構えなおし

「斬り捨てる・・・」

 言葉をその場に残し、彼の身体は既に一歩先にいた。

「クククク・・・愚かな」

「・・・フン」

 疾風の速さで白い男に肉薄したラスナは、そのまま男を袈裟斬りにする。――――が

 ガギィ――――

「・・・・・・!」

 斬ろうとした瞬間、何かに弾かれた。

「クククク・・・・・・ん?」

「てぇい!」

 ギィィィィン!

 男は少し驚いたように、後ろからの剣を片手で弾く。辺りに金属的な音が響いた。

 ラスナが気をひいている間に、ジュンが後ろに回りこんだのだ。

「・・・攻撃の瞬間まで、この私が気付かないとは・・・せっかくだが今日はこれくらいにしておこう」

 瞬間、男の全体を紅いベールが包む。そして、それはいきなり弾け、周りの二人を吹き飛ばす。

「きゃぁ!」

「ぐ!」

 二人は背中から床に激突し、ようやく立ち上がった時には、既に白い男の姿はなかった。

 

 街じゅう人形のようなクリーチャーであふれかえっていた。耐久力は無きに等しいが、数で言えばこれは脅威だろう。

「あ〜あ、起きたばっかなのに、ついてねぇ朝だなぁ!」

 言いながらも、それらをその大剣でなぎ払う長身の男、ヴィ、もといヴィクスだ。

 昼過ぎまで寝る予定だったのだが、警報のせいで起きてしまった。部屋じゅうに鳴り響くのでたまったものではなかった。無理やり起こされたので、機嫌が悪かったせいか、簡単に身だしなみを整え、外の様子を確認せずに、この警報の原因を潰すために外に出た。そしてこのクリーチャーの一団と出くわしたのだ。

 もちろん、体力には相当の自信がある。1日中振り回していても、へたばることは無いだろう。しかし、この男、女や酒のこと以外に関しては相当飽きっぽかった。

 周りを見ると、たくさんのハンター達が自らの生活を、あるいはこの都市を守るために果敢に戦っている。一般市民は、ほとんどがシェルターに隠れたのか、思しき人物はいない。

「ちょっと!何してるんですかぁ!?あなたもシェルターに隠れてください〜!」

 自分を囲む人形達は一応全滅させたので、少し休憩をしていた時に、声をかけられた。

「・・・あん?」

 起き抜けの不機嫌さで振り向く。そこにいたのは、オレンジっぽい色をしたコートのような服、藍色の髪を頭の端で二つに結んである少女であった。不機嫌な顔を見たのか、ビクッと後じさった。今度はもじもじと口ごもる。

「え・・・え〜とぉ、そのぉ・・・・・・」

 少女を見たのか、ヴィクスははっと我に返り。無理やり微笑んだ。

「いや、その・・・何か用かな?」

 少女は、上目づかいでヴィクスを見つめ

「・・・あのぉ、ハンターの方ですか?」

 少女がヴィクスを上から下までみる。その手には小さな機械が握られていた。

 ハンターは、身分証明書としてライセンスの携帯を義務つけられている。それを調べる機械だろう。

 とすると、この少女はC.G(シティガーディアンズ)で、民間人を避難させているのだろう。

「いや、観光客だぜ」

 とりあえず応対する。

「だったら・・・シェルターの方に・・・・・・」

「大丈夫ダイジョーブ。コレも観光のうちだから」

「・・・で、でもぉ」

「いいからいいから、他の人でも助けといて・・・・・・おっと、そうだ」

「え?」

「名前は?」

「え、えと・・・・・・」

「名前、名前」

 ヴィクスは少女に詰め寄る。

「イブ・・・イブ・ヴァン・ディールです」

「イブちゃん・・・・・・だね。分かった。お仕事頑張って」

 そう言って、手を振る。少女は、納得がいかないように手を振って手中の機械を見、他の場所へ走っていった。

「角の生えたクリーチャーはここにはいない・・・それに、こいつらどもの数も減ってきている。どうやら、本命はもういないようだな・・・」

 そう言って後ろを振り向き、迫ってきていた人形の一団に大剣を向けた。

「フン、雑魚どもめが・・・相当オレの力が見てぇみたいだな・・・」

 

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