第四章  『しばしの療養』

 

「全く・・・あんた。マクシミルの名を汚す気?」

「す、すみません・・・・・・姉さん。」

「あ〜あ、もう。何でこんな弟持ったんだか・・・」

 ジュンに説教されているのはシュー、さっきから一時間ほど続いている。そろそろネタが尽きてきたようだ。もう終わるだろう。シューは研究局の奥で背中を壁にうちつけて気絶していた。何かの衝撃で、吹っ飛んだらしい。検査待ちである。

 医療局の六人部屋である。今回の事件で多くの負傷者が出たようだ。しかし、侵入したクリーチャーは全滅させ、街にはほぼ影響は無かった。今頃はもとの活気を取り戻しているだろう。

 全滅させた頃にはアセンブラの後遺症も治り、リハビリと称してラスナと本部地下二階の訓練施設へ行っている。グリードはいまだに行方知れずである。

 突然、隣のベッドから、声がした。

「なぁ・・・」

 ジュンが声の方を首だけで振り向く。目が据わっている。

「・・・何よ?」

 そのベッドには、先程研究局で倒れていた緑髪の男が、包帯でぐるぐるに巻かれた腹を抑えながら、こちらを見ている。

「さっきからそこで大声出されると傷に響くんだが・・・」

「うっさいわね。もうちょっとで終わるから、それくらい我慢しなさいよ!」

「ああ・・・それが響くんだよ」

 険悪な雰囲気、病人対恐女の大決戦が始まるかと思われたその時、病室のドアが勢いよく開いて朱色の影が飛び込んできた。

「・・・!?」

 それは、少女―イブ―であった。

「あわわわ!リーーーダーーーーァ!!どうしたんですか!?うあ、包帯!こんなに!た、大変だぁ!!リーダー!!しんじゃやだぁ!死なないよね!?どうなの、リーダー!?ねぇ、リーダー!へんじをしてぇ〜〜!!!」

 そこまで一気にまくし立て、今度は病人―リーダー―の首を両手で締め出す。

「や・・・やめろ・・・し、死ぬ・・・・・・お、落ち着・・・」

「・・・」

 ジュンもシューも目が点になっている。そうしているうちにも、病人の顔は青ざめていく。本当に死にそうだ。

 ポカッ―――

「やめんか!」

「あぅぅ・・・」

 いつの間に入ってきたのか、マルナがイブの頭にげんこつをかます。イブは頭を押さえてふらついた。

 男はゼェゼェと青ざめた顔で首を押さえている。

「ったく、患者を殺さないでよ。皆片付けるの嫌がるんだから」

「はぃぃ、ご〜めぇなさいぃ」

 涙目になってイブが謝る。相当いたかったようだ。マルナは緑髪の男を振り向き。

「アーリィさん、研究局につくのがかなり早かったようだけれど・・・・・・何か、そういう報告でも?」

 アーリィと呼ばれた男は、フンと鼻で笑い

「いや、知り合いの、な。見舞いに行くところに、警報が鳴ったのだ。それに、俺に召喚術は使えん」

「いえ、疑っているわけじゃないんだけど・・・」

「そうか」

「ええと、後は」

 マルナは、ジュンの方を振向く。

「あなた達が、見たというか交戦した不信な男の事だけど」

「あの野郎・・・油断させやがって」

 アーリィが、思い出したのか、悔しそうにうめく。

「ええ・・・そいつがどうしたの?」

 既にいろいろな人に聞かれたのか、うんざりというふうな言い方をする。

「・・・いえ、まぁいいわ。あとでラスナもいれて、改めて聞くわ。アセちゃんが来たわよ」

 ―――ガチャ

「ふぇ、いっぱいいるな〜。お?」

 ドアから顔だけ出して、つぶやいたアセンブラは、シューの隣のベッドに眼を止めた。

「おお、おっす。アーリィ。どしたの?糖尿?」

 入ってきて、緑髪の男に「よっ」と手をあげる。

「・・・糖尿じゃねぇ」

「むう、相変わらずノリが悪い」

「わるかったな」

 アセンブラは気にせず、辺りを見渡す。

「やっぱり、グリードいないか」

「グリード探してるの?」

 ジュンが意味も無くアセンブラの頭をなでながら聞く。

「うむぅ、まいっか。散歩行ってくるのだ」

「あら、そう残念。またね」

「うむ、じゃね〜」

「また」

 すたこらとドアから出て行く。

「はぁ、アセンブラさん。あこがれちゃいますぅ」

 イブが、つぶやく。

「あら、貴女。アセちゃんのファンなの?」

「ええ。だってぇ、かっこいいじゃないですかぁ」

「あらぁ、私からすれば可愛いと思うけど?」

「私から見たらかっこいいんです。ああ、そういえば、お見舞いできなかったなぁ。はふぅ」

 イブが少し残念そうにつぶやく。

 ジュンはそれを聞いて

「え、お見舞いにきたの?」

「はい、でもいく途中に警報が鳴って、リーダーが研究局に走ってって、私は市民の非難に・・・」

 ジュンは少し驚いて、アーリィのほうを見る

「え、じゃぁ、あんたもお見舞いに?アセちゃんもあんたの事知ってたし、一体どういう関係なの?」

 そう言って、アーリィを睨みつける。返答次第ではどうなるか分からない。

 アーリィは、深く息を吐いて、ベッドの背もたれにもたれかかり、

「そうだな・・・」

 

 

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