大原文庫

小豆沢村童話集

「いそがなくちゃ。」
一匹の小ネズミが、ちょ
ろちょろ。
「いそがなくちゃ。」
大きな木の実をえっちら
、おっちら。
坂道も岩の割れ目も、
何のその。
すると一匹のしまりすが

「ネズミくん、どうした
んだい。」
気付いた小ネズミは
「それが大変なのさ、ネ
ズミ社会でも、あすはク
リスマスなんだよ。
サンタさんにプレゼント
の木の実をたくさん、
頼まれていたのに、
まだ足りない分があった
んだよ。」
「そりゃ、本当に大変だ
。では私もお手伝いしま
しょ。」
二匹は大忙しで山を越え
て、とうとうサンタさん
の家につきました。
「おや、二匹とも、どう
したんだい。」
サンタさんが、まだ居ま
した。
「あら、サンタさん、今
日はお出かけでしょ。」
「あっはっはっはっはっ
は。小ネズミさん、
今年も一日まちがえたよ
。イヴは明日だよ。」で
も、間に合ってよかった

ねずみ色の空を見上げれ
ば、白い妖精たちが舞い
おりてきます。ふと、目
を落とすと一面まっ白な
雪野原が、こんもりと盛
り上がって居ます。小さ
い方を見ると黒い目が、
ぱっちりと開きました。
大きいほうは、お腹でし
ょうか。すぐ近くに居た
子リスが近付くと、ムッ
クリと起き上がりました
。「リス君、こんにちは
。」さあ、誰でしょう。
そう、愉快なスノーマン
の誕生です。小雪舞う丘
の上には古い教会があり
、その時鐘が鳴りました
。「ああ、お腹が空いた
。」スノウマンは両手一
杯に、真っ白な雪をかき
集め食べました。池の氷
水を旨そうに「ごくり、
ごくり。ぱ〜っ」満足そ
うに微笑むと柔らかい良
く冷え切った雪のベッド
で眠りました。「ううっ
いいな〜。冷えそう。」

其れは雪の吹雪く寒い夜
でした。北国アイスラン
ド島にゼロと云う一匹の
狼が居ました。吹雪に閉
ざされた日は雪の洞くつ
で、嵐の過ぎるのを一匹
だけでじっと待つのです
。寂しくなった時、雪穴
から這い出し、「オ〜〜
〜〜。ゥオ〜〜〜〜オ〜
〜〜〜。」と叫ぶのでし
た。此の北の大地で狼達
は、こうして仲間と連絡
するのでした。或日もゼ
ロは暖かい洞くつで、う
たた寝をして居ると、仲
間からの定期便が聞こえ
ました。「オ〜〜〜〜。
ゥオ〜〜〜〜。」其れは
其れは悲しそうな声でし
た。「あっ、お母さんが
哭いている。お腹が空い
て居るんだ。」ゼロは決
心しました。雪穴の奥に
しまっておいた大きな生
肉を、がぶりとくわえる
と、暗く寒い嵐の中へ這
い出しました。外はもの
すごい嵐。でもゼロは怯
みません。「お母さんが
呼んで居るんだ。」寒い
寒い吹雪。大あらしの中
へふみ出したゼロは、風
に吹かれて転げ回り、口
にくわえて居た生肉を思
わず、ぽとりと落として
しまいました。「あっ、
いけない。」ふたたびゼ
ロは生肉をくわえると、
歩き出しました。お母さ
んの居る所は遠く道は暗
いです。だんだんゼロは
お腹が空いて来ました。
口にくわえた生肉は、と
ても良い匂いがします。
でもゼロはじっと我慢を
して歩きます。長く歩い
て居る内に、ゼロのだ液
は寒さで凍り、生肉が口
にへばり付きます。「あ
あ、冷たい。」ゼロはよ
うやくお母さんの待つ雪
穴を見つけ、お母さんの
暖かい巣へたどり着きま
した。「ゼロや。ありが
とう。」足をくじいた母
狼は、懐かしいゼロの体
をなめ回し、喜んでくれ
ました。

冷たい石畳みの路地に、
小さな男の子と女の子が
立っていました。街は行
き交う人々で溢れていま
す。「おやおや寒そうに
、坊や達どうしたの、こ
んな所で。」買物帰りの
奥さんが、思わず足を止
めました。空からは綿の
実のような、ふっくらし
た雪が落ちてきます。「
あら、やだ。人形じゃな
いの。でも誰がこんな所
に置いて行ったのかしら
。」お店の小父さんに聞
いても分りません。「そ
うだ、お巡りさんに聞い
てみましょう。」奥さん
は重たい人形を抱えて、
警察署に行きました。と
ころが警察では、クリス
マスで大賑わい。それど
ころじゃありません。「
良いから、持って行きな
さい。」奥さんは「そう
だ、持って帰ろう。」と
ぼとぼと、家路を急いで
帰る道、大事な荷物を警
察に置きわすれてきまし
た。「あら、大事なクリ
スマスの御買い物。」荷
物を受け取り、思わず小
さな手を二つ握って、夢
中で帰って来ました。外
はもう暗い夜道で、お家
では旦那様が表に灯りを
出して待っていてくれま
した。「おおい、おまえ
。その子供達は、どうし
たんだい。」奥さんは思
わず握りしめた、二つの
温かい手を見つめました
。しばらく無言の奥さん
は、熱い涙を流して云い
ました。「かみさま。子
供をありがとう。」勿論
二人には初めての子供で
した。(念の為申します
が、奥さんが人形と本物
の子供を間違えて帰った
訳ではありません。)こ
んな話があっても良いよ
ね。

「光の国」の正太くんに
は、お父さんも、お母さ
んも居ません。可愛い妹
も、弟、優しいお兄ちゃ
ん、お姉ちゃんも居ませ
ん。毎年暮れになると其
れはもう、寂しいです。
「ちえっ、クリスマスな
んて…。」そんな或日、
園長先生が正太君を呼ん
で云いました。「正太く
ん。もう直ぐクリスマス
ね。」正太君は横を向い
てプイッ。「ねえ、正太
君、今年のクリスマスに
は、サンタさんのプレゼ
ントは、何が好いかしら
。」「……。」「欲しい
ものは無いの?」「……
。」本当は園長先生は知
って居ました。正太君が
本当は何が欲しいか。毎
日少しづつ北風が激しく
冷たくなり、とうとう今
日は雪が降りそうです。
「正太君園長先生が呼ん
でいるわよ。」園長室に
正太君が行くと、知らな
い人がにこにこ笑ってい
ました。「正太君、今日
は何の日。」「クリスマ
ス…。」「今日はね、サ
ンタさんが正太君に素敵
なプレゼントを用意した
のよ。」「……。」「正

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